2011年9月18日日曜日

届けられなかった本

むかし、むかし

小児科の看護師をしていました。

大きな病院の小児科病棟。

私が看護師で就職した頃から

小児癌で入院してくる子どもが増えました。

小児科なら生き死ににあまり関係ないかも。

安易な理由で希望した科。

しっかりと死と対面する日々でした。

楽しい思いでもたくさんあります。

今でもすぐに顔も名前を出てくる

長期入院の子ども達もいます。

その頃同じ職場で働いていた友人と話をすると

必ず、子ども達のことが出てきます。

そんな思い出の中でちょっと苦い思い出があります。

それは、1年目だったかな?

夜勤のときです。

3人で40床を越える子ども達を看護していました。

先輩ナースが担当を割り振ります。

「今日は、あなたは受けもちを減らすから、

消灯前に長期入院の子ども達へ本を読んであげてね」

こんな風に指示されました。

ところが、私はその日消灯前には長期入院の子ども達の

ところには行けずに、あっという間に消灯時間を迎えてしましました。

要領も悪かったし、優先順位も間違えてしまったのでしょう。

夜勤が終了したあと、きつく先輩に注意されました。

「なぜ行かなかったか。本を読まなかったか。

今日という日は二度とこない。

長期入院で家族と離れて暮らすということを解っているか。・・・・・・・・・」

自分で自分のふがいなさに涙した記憶があります。

そして、次の勤務で病棟にいくと、

長期入院の子どものうち一人は

症状が悪化し、個室に移っていて、

しばらく闘病したあと、亡くなりました。

今日という日は二度とこない。

この時ほど、この事実が私の心に刺さったことはありません。

あの日、本を読めなかった。

あの日、届けられなかった本。

この時の思いがあるから、

今も、子ども達に本を読むのかもしれません。

誕生学や、性の健康教育を伝えたいと

思うのかもしれません。

子ども達に、先輩ナースに感謝しています。

くじけそうになっても

続ける勇気をもらいました。

そして、あの日の子ども達、ごめんね。

本当に、本当に、

みんなにあの日 

本を読みたかったんだ。

おやすみって伝えたかったよ。